閉店の告知が出された直後、地元コミュニティやネット上では「船橋FACE店のテナント料が高すぎて赤字に耐えられなくなった」「コロナ禍で客足が戻らず見捨てられた」といったネガティブな言説が独り歩きしました。しかし、流通アナリストの分析や商業施設の稼働実績を照らし合わせると、実態は大きく異なります。
船橋FACEビルは2003年春に開業した複合商業施設であり、ビックカメラはその中核テナントとして約20年にわたり営業を続けてきました。日本の大型商業ビルにおけるマスターリース契約や定期借家契約は、10年や20年といった長期スパンで大きな節目を迎えます。ちょうど20年目の契約満了期が迫るなか、ビル側との再契約条件や将来的な設備改修コストを天秤にかけた結果、自社保有スペースの比重を高められる百貨店内店舗への集約が経営合理性に適致したと見るのが自然です。
駅直結の好立地ゆえに賃料水準が高止まりしていたFACE店に対し、東武船橋店は百貨店側のフロア構造改革の一環として招致された経緯があります。百貨店全体の集客エンジンとしての役割を担う東武店は、ワンフロアの面積が広く、ファミリー層や高齢者層までゆったりと回遊できる強みを持っていました。「南口のFACE店で若年層の通勤客を拾い、北口の東武店で週末の大型家電を売る」という二頭流は、実店舗とECの融合が進む現代において非効率な重複投資となっていたわけです。
結果として、ビックカメラは南北の自社競合を解消し、人件費と固定費を劇的に削減しながら、船橋エリアのシェアを強固に保つ選択をしました。「売れなくなったから逃げた」のではなく、「利益率の高い旗艦店へ統合して組織防衛を図った」というのが客観的事実が裏付ける真相です。