ホラー的文脈ばかりが一人歩きする施設だが、本来の姿は昭和40年代から50年代にかけて日本中で急速に増加したドライブイン型レジャーホテルの一つであった。宮城県石巻市周辺におけるモータリゼーションの波に乗り、郊外の主要道路沿いにオープンした「ホテルメルヘン」は、欧風のファンタジーな世界観を模した外観と独立した客室構造を売りにしており、オープン当初は地域のカップルやドライブ客の隠れ家として賑わいを見せていた。
しかし、バブル崩壊後の景気低迷や主要道路のバイパス化に伴い、地方のホテル・レジャー産業全体が厳しい経営難に直面する。同施設も例外ではなく、昭和の終わりから平成初期にかけて静かに廃業へ追い込まれた。その後、解体や敷地整備がなされないまま放置された結果、高度経済成長の残り香を残したまま自然に侵食されていったのが実態である。