優れた楽曲の証拠として、カバー曲の多さとその幅広さが挙げられます。『ワインレッドの心』は発売直後から現在に至るまで、国内外の錚々たるトップアーティストたちによって歌い継がれてきました。
作詞を手掛けた井上陽水自身によるセルフカバー(アルバム『9.5カラット』収録)は、陽水特有の飄々とした中にも底知れぬ深みをたたえた名唱として知られ、同アルバムもミリオンセラーを達成しました。さらにアジア圏の歌姫であるテレサ・テンによるカバーは、東アジア全域にこの曲の魅力を広げる決定打となりました。
その後も、中森明菜、徳永英明、石井竜也、椎名林檎、さらには海外のジャズやAOR系アーティストに至るまで、実に多様なジャンルで再解釈が行われています。
定額制音楽配信サービスやSNSが普及した現代におけるリスナーの生の声やコミュニティの反応を検証すると、極めて興味深い傾向が見られます。リアルタイム世代ではない20代・30代のリスナーから「80年代の曲とは思えないほどグルーヴが今っぽい」「イントロが流れた瞬間に引き込まれる」「玉置浩二の色気が凄まじい」といった賞賛のコメントが数多く寄せられています。単なる懐メロの枠を超え、現代のシティポップ再評価の流れとも合流しながら、新たなリスナーを着実に獲得し続けています。