「脳筋」という言葉の直接的な意味は、「脳みそが筋肉でできているかのように、物事を深く考えず力技や直感で突破しようとする状態・人物」を指す略語です。その元ネタは古くから存在する俗語「筋肉バカ」に遡りますが、現在定着しているニュアンスを決定づけたのは、1990年代後半から2000年代にかけて隆盛を極めたオンラインRPGやTRPG(テーブルトークRPG)のコミュニティでした。
ゲームの世界において、知力(INT)や信仰心(MND)といった魔法系のパラメーターを極限まで削り、腕力(STR)や体力(VIT)のみにステータスを全振りしたキャラクター構成は「脳筋ビルド」と呼ばれます。複雑な属性魔法や絡め手を使わず、巨大な武器を振り回して敵を力尽くでねじ伏せるプレイスタイルは、その明快さと爽快感から多くのゲーマーに愛されてきました。
このゲーム用語としての用法がネット掲示板やSNSを通じて日常会話へと逆輸入され、「理屈をこね回す前に行動する人」「直球勝負を好む性格」を親しみを込めて「脳筋」と呼ぶ文化が醸成されたのです。
しばしば混同される「筋肉脳」や「単細胞」「体育会系」といった類語との違いにも注目すべき点があります。筋肉脳や旧来の体育会系という表現には、理不尽な上下関係への服従や精神論の押し付けといった組織的なネガティブイメージがつきまといがちです。一方で「脳筋」は、あくまで個人の行動様式やプレイスタイルに焦点を当てた言葉であり、どこか憎めないユーモアを含んだ表現として受容されています。