なぜ「齋」という文字には中央に「示」が含まれ、これほど厳格な骨格を持っているのでしょうか。その成り立ちを探ると、古代の宗教的儀礼と日本の貴族社会の歴史に行き着きます。
「齋」の会意兼形声文字としての成り立ちは、「齊(揃う・整う)」と「示(神への捧げ物を置く祭壇)」が合体したものです。ここから、「神仏に祈る前に、飲食や行動を慎んで心身を清浄に整えること(物忌み・潔斎)」という意味が生まれました。「齋」という字そのものが、神聖な空間と精神的な清らかさを象徴しています。
日本の苗字における「齋藤」のルーツは、平安時代中期の武将・藤原秀郷(ふじわらのひでさと)の後裔に始まります。伊勢神宮の最高神職である「斎宮頭(さいぐうのかみ)」を務めた藤原氏の一族が、その職名である「斎」と藤原の「藤」を組み合わせて「齋藤」を名乗ったのが発祥とされています。神に仕える清らかな血統への誇りが、この17画の重厚な漢字に刻み込まれているのです。