1984年のデビュー作『お葬式』から1997年の遺作『マルタイの女』まで、伊丹十三監督が遺した長編劇映画は全10作。そのすべてにおいて宮本信子は主演あるいは重要なヒロインを務めました。夫婦が二人三脚で挑んだ制作手法は、徹底したフィールドワーク取材とエンターテインメント性を高度に融合させた、当時の日本映画界では極めて異例の革新的な試みでした。
1985年の『タンポポ』は、ラーメン屋の立て直しを西部劇のクリシェを借りて描いた「ヌードル・ウエスタン」として制作され、国内のみならずアメリカのミニシアターでも異例のロングランヒットを記録。食と人間の欲望を多層的に描き出した構成力は、現在も世界各国の映画クリエイターから絶賛されています。
そして1987年の『マルサの女』において、おかっぱ頭にソバカス、独特の甲高い声で脱税者と対峙する国税局査察官・板倉亮子を演じた宮本信子は、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を始めとする主要な映画賞を総なめにしました。さらに1996年の『スーパーの女』では、経営不振のスーパーマーケットを舞台に、主婦の目線から流通の欺瞞を正していくプロセスを痛快に描き出し、主婦層を中心に熱狂的な支持を集めました。