2022年、小栗旬は第61作『鎌倉殿の13人』において、ついに大河ドラマの単独主演を務めました。脚本を手掛けたのは、希代の劇作家・三谷幸喜。小栗が演じたのは、鎌倉幕府第2代執権・北条義時です。
本作における小栗の演技は、大河ドラマ史における「主人公像のパラダイムシフト」と評されています。
- 第1幕(伊豆の青年期):源頼朝(大泉洋)の我が儘に振り回され、八重(新垣結衣)への純粋な片思いに胸を焦がす、平凡で心優しい田舎武士の三男坊。
- 第2幕(幕府草創期〜修羅の道):頼朝の冷徹な政治手法を間近で学び、御家人同士の凄惨な権力闘争の中で、一族を守るために自らの手を血で染め始める過渡期。
- 第3幕(執権時代・絶対権力者):かつての純朴さは完全に消え失せ、黒い装束に身を包み、身内や旧友をも容赦なく粛清していく「鎌倉の怪物」。
視聴者の間で話題となったのが、回を追うごとに変化していく小栗旬の「目つきの暗度」と「声のトーン」です。第1回の無邪気な笑顔から、最終回で見せた疲弊しきった権力者の冷徹な眼差しまで、一人の人間が組織のトップとして変貌していくグラデーションを、緻密な計算と圧倒的な集中力で演じ切りました。
最終回「報いの時」における義時の最期の瞬間は、日本のドラマ界に衝撃を与え、ギャラクシー賞や数々のテレビ賞で極めて高い評価を獲得しました。1年間を通して一人の男の生涯を演じ抜くという大河ドラマの醍醐味を、極限まで突き詰めた金字塔と言えます。