時代が下り、江戸時代に入ると自然観察の精度は飛躍的に向上する。その立役者となったのが、著書『大和本草』で知られる博物学者・貝原益軒である。
貝原益軒は、単に中国の古典を盲信することなく、実際の観察と語源学的な検証を重ねた。彼は『大和本草』の中で、クラゲの形状や毒性、食感に至るまで詳細な記録を残している。益軒は「水母」や「海月」の表記を整理しつつ、庶民の間で使われていた「水くらげ」や「備前くらげ」といった地域ごとの呼び名や生態的特徴を細かく分類した。
目に見える現象をロジカルに分析しようとした益軒のアプローチは、後世の日本の本草学(博物学)に巨大な影響を与えた。彼が遺した考察は、言葉の由来を探る現代の言語学者にとっても貴重な一次資料であり続けている。