ヒロアカ屈指の長期伏線であった「雄英高校の内通者問題」において、葉隠透は連載中盤から常に疑惑の筆頭候補に挙げられていました。USJ襲撃事件の際に彼女がどこで戦っていたのか証言が曖昧だった点や、林間合宿編で就寝中に奇襲を受けた際の位置関係など、不可視の身体であるがゆえに「行動の裏付けが取れない」という構造的な疑念が読者コミュニティで渦巻いていたためです。
その疑惑が最高潮に達したのが、原作第335話ラストの描写でした。巨悪オール・フォー・ワン(AFO)が「私には多くの友達(仲間)がいる」と語る不穏なモノローグの直後、夕暮れの中に佇む葉隠透の背後からのカットが差し込まれたのです。この演出によって、多くのファンが「やはり葉隠が黒幕のスパイだったのか」と絶望的な確信を抱かされました。
しかし、続く第336話から第337話にかけて明かされた真相は、読者の予想を鮮やかに覆すものでした。葉隠はスパイだったのではなく、普段から様子がおかしかったクラスメイト・青山優雅の不審な単独行動を心配し、密かに後を追っていた目撃者だったのです。両親を人質に取られAFOの脅迫に従わざるを得なかった青山の告白を聞き、葉隠はショックを受けながらも緑谷出久(デク)へ即座に知らせ、レーザー攻撃から仲間を守るために自らの体を投げ出しました。「同じ教室で…一緒に笑い合ってたじゃない…!」と涙ながらに叫んだ彼女の姿は、内通者疑惑を完全に晴らすと同時に、1年A組の絆を再確認させる決定的な契機となりました。