安心立命の精神が日本文化の深層に根付くまでの道のりには、禅宗の系譜が大きく関わっている。インドから中国へ禅を伝えた達磨大師の「面壁九年」のアプローチは、どんな困難にも挫けず自己の内面を見つめ続ける強靭な精神の象徴である。この厳格な修行精神は、日本に渡来した後に臨済宗などの武家社会と深く結びつく宗派において、独自の発展を遂げることとなった。
織田信長や徳川家康をはじめとする戦国武将たちが、死と隣り合わせの極限状態で禅の教えを支えとしたことは有名だ。日本仏教協会の関係者は、「現代人が抱えるメンタルの不調や不安感も、根底においては自らの天命や存在理由を見失っていることに起因する場合が多い。臨済宗をはじめとする伝統的な禅の教えは、外部の雑音を遮断し、自分自身の内なる本性と向き合う姿勢を今なお提示している」と指摘する。歴史の荒波を乗り越えてきたこの思想は、予測不能な不確実な時代を生き抜く現代人にとっても、確固たる羅針盤となっている。