歴史に残る数々のG1レースにおいても、無人の馬がレース展開を大きく乱すシーンは度々目撃されてきた。競馬界のレジェンドである武豊騎手や、若手トップ騎手として活躍する横山武史騎手など、第一線で戦うジョッキーたちもこうした不確定要素と常に隣り合わせで手綱を握っている。
騎乗している側の心理としては、これほどやりづらい存在はない。通常であれば、周囲の騎手の視線や手綱の動きから次の展開を予測する。しかし、騎手が乗っていない馬には駆け引きが通用しない。インコースを突発的に締め込んできたり、予想外のタイミングで斜行したりするため、周囲の騎手は衝突を避けるために進路変更を余儀なくされる。
特にペース配分が命である長距離重賞などでは、先頭に立った無人の馬がマイペースで大逃げを打つことで、後続集団の展開計算が狂ってしまうケースが珍しくない。「追うべきか、無視すべきか」――騎手たちの刹那の判断が、レース全体の着順や結果を激変させてしまうのだ。