地方都市の飲食市場において、単一の和食ブランドが数十年間にわたり地域一番店の座を維持することは容易ではありません。かもがた茶屋を展開するのは、岡山県浅口市にルーツを持ち、倉敷市や岡山市などで多彩な飲食事業を展開する株式会社ケイコーポレーションです。同社が掲げる「食を通じての地域社会への貢献」という理念は、単なるスローガンにとどまらず、店舗のオペレーションと空間づくりに完全に落とし込まれています。
取材を通じて浮かび上がった最大の強みは、日常の食事(ケ)と特別な記念日(ハレ)の境界線をシームレスに繋ぐ「ポジショニングの妙」です。ファーストフードや低価格回転寿司では満たせない「きちんとした料理を食べたい」という欲求と、高級料亭では敷居が高すぎるという心理的ハードルの間にある広大な空白地帯を、同店は見事に捉えています。
現場を観察すると、平日の昼間はシニア層の憩いの場や主婦層の会合として賑わい、夜や週末には小さな子どもから祖父母までが揃う三世代の家族連れで満席になります。瀬戸内海の鮮魚や季節の野菜を惜しみなく使い、店内で職人が引く出汁の香りが漂う空間設計は、訪れる人々に「ここを選べば間違いがない」という強い安心感をもたらしています。