「狭くて後悔したくないから、とにかく広く設計したい」と考え、通路幅を115cmや120cmに広げてしまうケースがあります。しかし、キッチン通路幅が広すぎることによるデメリットもまた、毎日の調理作業を著しく損なう要因となります。
キッチン空間における作業効率は、シンク・冷蔵庫・加熱機器を結ぶ「ワークトライアングル」の総距離で測られます。通路幅が広がりすぎると、コンロで加熱調理をしながら背面のカップボードから調味料を取る際、あるいは作業台から振り返って電子レンジへ皿を移す際に、「一歩踏み出す歩行」が毎回強制されます。
1回あたりの移動はわずか1〜2歩の差に過ぎません。しかし、朝夕の調理で何十回、何百回と繰り返される振り返り動作において、軸足を固定したまま上半身の捻りだけで届くか、足腰を使ってステップを踏む必要があるかの差は、年間の蓄積疲労として身体に重くのしかかります。特にフライパンや熱いスープ鍋を持った状態での無駄な移動歩数は、転倒や火傷といった家庭内事故のリスクを高めることにもつながります。