長崎原爆資料館の館内に漂う緊張感は、一般的な歴史博物館のそれとは根本的に性質が異なる。再構築された被爆建造物の残骸や、直視を拒むような被害者の遺影群に直面するとき、鑑賞者が突きつけられるのは教科書的な歴史知識ではない。肉体と暮らしが一瞬にして引きちぎられた「生の破壊」そのものの生々しさだ。
心理学や精神医学の分野では、凄惨な出来事を直接体験していなくとも、極めて写実的で凄惨な資料や映像に触れることで心身に大きなショック症状が生じる現象をトラウマ・二次受傷と呼ぶ。長崎原爆資料館の展示は、核兵器がもたらす非人道性を偽りなく伝える目的で構成されている。だからこそ、観る者の心理的防衛ラインを鋭く突き破ってしまうのだ。特に多感な中高生や、戦火の光景を知らない現代の若い世代にとって、その視覚的刺激は強烈な体験となり、強い不安や脱力感として長期間心に残り続けることがある。