日本国内において、海外のような水上コテージが容易に誕生しない背景には、法制度の厳格な二重構造が存在します。建築物を建てる場合、日本の建築基準法第2条では「土地に定着する工作物」であることが大前提となります。水上に浮かぶ浮体物は原則として「土地」ではないため、建築物としての建築確認申請が受理されません。
一方で、海上に浮かぶ構築物を「船舶」として登録しようとすると、今度は国土交通省管轄の船舶安全法が適用されます。これには航行能力、専任の海技士配置、救命設備、定期的なドック入り(乾ドックでの船底検査)などが義務付けられ、ホテル事業としての採算性を根本から揺るがします。過去に長崎のハウステンボスが実証実験を行った球体型水上ホテルなど、一部の特区認定事例を除き、日本で淡路島水上ホテル宿泊を恒久的に実現することは制度上の障壁が極限まで高いのが実情です。
さらに見過ごせないのが、淡路島を取り巻く自然環境のリスクです。明石海峡や鳴門海峡に挟まれた淡路島周辺は、国内有数の激しい潮流で知られます。年間を通じて発生する台風の直撃や高潮、冬場の季節風による強風と三角波は、浮体構造物にとって致命的な負荷となります。観光庁の安全管理指針や損保各社の引き受け基準に照らしても、自然災害時の避難動線確保や宿泊客の安全担保に莫大なコストがかかるため、民間デベロッパーの多くは「波打ち際の堅牢な陸上地盤に建てる」という現実的かつ最高効率の解を選択しています。