演奏者の間で最も混同されやすいのが「分散和音」と「アルペジオ(Arpeggio)」の違いです。結論から言うと、分散和音は広い概念(総称)であり、アルペジオはその中に含まれる特定の演奏スタイル・技法を指します。
語源を探ると、アルペジオはイタリア語で「ハープ(arpa)のように弾く」という意味を持ちます。下から上へ(あるいは上から下へ)音階のように順序よく駆け上がる、あるいは波打つように連続して鳴らす奏法が本来のアルペジオです。一方で、分散和音は「ド→ソ→ミ→ソ」のように音が上下にジャンプするパターンもすべて包含します。
楽譜上の表記にも明確な違いがあります。
楽譜において和音の左側に縦の波線記号が添えられている場合、それは「アルペジオ記号」です。これは和音の構成音を一番低い音から素早く下から上へずらして弾く装飾的な奏法を指示しています。一方、音符そのものが8分音符や16分音符として横に並べて書かれている伴奏形は、広い意味での分散和音として記譜されます。