凶悪な強盗事件のニュースを目にする際、最も議論を呼ぶのが「なぜ死刑にならないのか」「どのような条件が揃えば死刑が確定するのか」という疑問です。日本の刑法において、強盗が人を死亡させた事件は刑法240条(強盗致死傷罪)に規定されています。条文には「強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する」と明記されており、人の命を奪った場合の法定刑は「死刑」または「無期懲役」の2者択一しか存在しません。
この究極の2択において、裁判官や裁判員が量刑の基準として絶対的な指針としているのが、1983年に最高裁判所が示した「永山基準」です。元連続射殺魔の永山則夫元死刑囚の事件上告審において提示されたこの基準は、以下の9つの要素を総合的に考察して死刑の適用を判断すると定めています。
1. 犯行の罪質
2. 動機・理由
3. 犯行態様(殺害方法の残虐性・執拗性)
4. 結果の重大性(特に殺害された被害者の数)
5. 遺族の被害感情
6. 社会的影響
7. 犯人の年齢
8. 前科関係
9. 犯行後の情状(自首の有無、隠蔽工作など)
実務上、この中で最も決定的なウェイトを占めるのが「殺害された被害者の数」です。過去の最高裁判例の蓄積において、利得目的の殺人であっても被害者が2名以上の場合は死刑が第一選択となりやすく、逆に「被害者1人」のケースでは、原則として無期懲役が選択されるという強固な量刑相場が形成されてきました。しかし、被害者が1人であっても例外的に死刑が選択される事案が存在します。その分岐点となるのが、徹底した利欲性、拷問に近い凄惨な計画性・犯行態様、そして過去に無期懲役などの前科があるかどうかという点です。