大戸屋の買収劇において最大の争点となったのが、調理プロセスのあり方を巡る哲学の違いでした。
旧大戸屋経営陣が頑なに守り続けていたのは、食材の仕込みから出汁引き、野菜のカット、肉の焼き上げまでをすべて各店舗の厨房で行う「店内調理」への徹底的なこだわりです。これは創業以来のアイデンティティであり、他チェーンとの明確な差別化要素となっていましたが、一方で以下のような経営課題を抱えていました。
- 調理オペレーションの属人化:店舗ごとの仕込み作業が多く、熟練スタッフの確保と人件費負担が重い。
- 提供時間の遅れ:ピーク時の料理提供に時間がかかり、回転率の低下を招く要因になっていた。
- フードロスの増加:各店での歩留まり管理が難しく、原価率の上昇を招いていた。
これに対し、コロワイド側が提示した処方箋が「セントラルキッチン(集中調理施設)の導入」でした。食材の一括加工や下処理を自社工場で集約して各店へ配送することで、店舗での作業負荷を大幅に軽減し、コスト削減と利益率の改善を狙う合理化策です。しかし、旧経営陣や一部の熱心な大戸屋ファンからは「工場の味になれば大戸屋の個性が死ぬ」と猛烈な拒否反応が巻き起こり、買収劇の象徴的な対立軸となりました。