皮膚の異常から糖尿病が発覚した患者や、日々現場で治療に当たる専門医への取材からは、教科書的な知識だけでは測れない「生々しい日常の苦悩」が浮かび上がってきます。
都内のIT企業に勤務する40代男性は、健康診断の数値を長年放置していた矢先の出来事を次のように述懐しています。
「最初は足のすねが少しカサついて痒い程度でした。ドラッグストアで痒み止め軟膏を数本買って塗り続けたのですが、冬が過ぎてもまったく治まらない。そのうち夜中に猛烈な痒みで目が覚めるようになり、無意識に掻きむしってシーツが血だらけになる日々が続きました。たまらず皮膚科に駆け込んだところ、医師から『念のため血糖値を測りましょう』と言われ、その場で測定した空腹時血糖値は240mg/dL、HbA1cは11.2%という異常値でした。単なるアレルギー性湿疹だと思い込んでいたので、頭を殴られたような衝撃でした」
また、糖尿病専門クリニックに勤務する日本糖尿病療養指導士の看護師は、女性患者特有の受診遅延について次のように証言します。
「女性の場合、初期症状として最も多いのが『繰り返す外陰部のかゆみ』です。婦人科を受診してカンジダ腟炎と診断され、抗真菌薬の膣坐剤を使えば一時的に治まるものの、翌月にはまた再発する。恥ずかしさから一人で悩み、市販のデリケートゾーン用軟膏を何カ月も使い続けているケースが目立ちます。尿中に大量の糖が漏れ出していると、真菌にとって栄養満点の培養液の中に患部が浸かっているような状態ですから、外用薬だけで完治するはずがありません。婦人科の先生から糖尿病の疑いを指摘されて内科へ紹介されてくる患者さんは、診察室で『まさか尿の糖が原因だったなんて』と涙を流されます」
Yahoo!知恵袋やSNSのコミュニティを見ても、「すねの黒ずみが消えない」「足の裏が常にチクチク痒いのに触ると感覚が鈍い」といった投稿が無数に存在します。皮膚の違和感は、身体が発している切実な警鐘であるにもかかわらず、多くの人々が「加齢による肌の衰え」や「季節性の乾燥」と片付けてしまっているのが実情です。