実在しないはずの大学名が、なぜデジタル空間で一人歩きするに至ったのでしょうか。ネット言説のアーカイブ調査とコミュニティの変遷を紐解くと、主に3つの有力な由来・元ネタ説が浮き彫りになってきます。
第一の有力説は、英国レスターシャー出身の世界的ロックバンド「Kasabian(カサビアン)」に由来する説です。2000年代以降の洋楽ロック界を牽引した同バンドのファンコミュニティ、あるいは音楽好きのネットユーザーが、学歴ネタや大学名をパロディ化する大喜利スレッドの中で「最も語感がそれっぽくて強そうな大学名」として投稿したフレーズが原型になったという経緯です。カサビアンという語感自体のスタイリッシュさが、パロディとしての完成度を押し上げました。
第二の説は、埼玉県春日部市(かすかべし)の住民を指す造語「カスカビアン(Kaskabian / Kasukabian)」を東京の冠と融合させた地域スラング説です。「シズオカン(静岡人)」「ハマっ子(横浜人)」のように、春日部エリアに愛着を持つネットユーザーが自虐混じりに生み出した言葉が、産業大学という堅苦しい組織名とドッキングしたという見方です。都心へのコンプレックスとローカルアイデンティティが入り混じった独特のユーモアが感じられます。
そして第三の背景として無視できないのが、かつてSNSを大きく揺るがした「国際信州学院大学」に代表される日本のネット空間特有の「架空大学ネタ」の潮流です。設定資料を精巧に作り込み、あたかも実在するかのように見せかけて楽しむネットスラングの一環として、この名称が受験生界隈や匿名掲示板で共有されていった経緯が確認できます。