ネット上の情報掲示板や知恵袋などで散見される「塩化コバルト紙は毒劇物指定されて学校から全廃された」という言説は、明確な事実誤認(フェイクニュース)です。
日本の法令上、塩化コバルトは毒物及び劇物取締法における「毒物」や「劇物」には該当しません。労働安全衛生法の名称等を表示・通知すべき危険物・有害物(表示対象物・通知対象物)であり、化学物質管理把握促進法(PRTR法)の第1種指定化学物質に指定されている物質です。つまり、流通や所持が法的に禁止されているわけではなく、「取り扱い事業者が危険有害性を正しく把握し、暴露防止策を講じること」が義務付けられているのが法的実態です。
教育現場の最前線を取材すると、学校現場における実態は「全廃」ではなく「リスクベースの運用見直し」であることが浮かび上がります。公立中学校の理科主任教諭はこう証言します。
「昔のように束になった試験紙を生徒へ配り、素手でちぎって使わせるような授業は行っていません。しかし、呼吸や蒸散、有機物の燃焼で水が生じる現象を肉眼で確認させる教材として、これほど感度が高く劇的な試薬は他にないのも事実です。生徒実験ではなく教師による演示実験に切り替えたり、ピンセットと保護手袋の着用を前提とした安全教育の一環として位置づけたりして活用を継続しています」
一方で、欧州(EU)のREACH規則をはじめとする国際的な化学物質規制の波を受け、塩化コバルト紙の代替品と最新動向も急速に進展しています。コバルトを一切使わずに銅錯体や環境調和型の有機色素を用いた「コバルトフリー水分検知紙」や、塩化銅を用いた試験紙への切り替えが企業や一部の教育委員会で始まっています。伝統的な塩化コバルト紙を盲信するのではなく、リスクを正確に理解した上で代替選択肢を視野に入れる姿勢が現代のスタンダードです。