『裸の大将』を語る上で絶対に外すことができないのが、エンディングで流れる名主題歌「野に咲く花のように」の存在です。作詞・杉山政美氏、作曲・小林亜星氏、歌唱・ダ・カーポ(榊原まさとし・広子夫妻)という黄金トリオによって1983年にリリースされたこの楽曲は、劇中の山下清の心情と美しく共鳴しています。
作詞を担当した杉山氏は、「誰にも気づかれず道端にひっそりと咲く名もなき花が、雨風に耐えながらも懸命に自らを全うする姿」を、社会の片隅で純粋に生きる山下清の姿に重ね合わせました。小林亜星氏が紡いだシンプルでありながら心に深く染み渡るペンタトニック(五音音階)風の旋律と、ダ・カーポの濁りのないハーモニーは、視聴者に「自分もあの花のように、飾らずに生きていいのだ」という深い癒やしと赦しを与え続けました。この楽曲は現在でも小学校の音楽の教科書に掲載されるなど、日本の抒情歌として不動の地位を築いています。
そして、そのドラマの源流にあるのが、山下清が遺した奇跡の美術的遺産です。清が確立した「貼り絵(ちぎり絵)」の技法は、既存の美術教育を受けていないアール・ブリュット(生のアート)の極致として、国内外で極めて高い評価を受けています。
代表作として知られる『長岡の花火』(1950年)は、夜空一面に広がる大輪の火花、信濃川の水面に揺れる反射光、そして土手に密集する群衆のざわめきに至るまで、数十種類の色紙をミリ単位に手でちぎり、気の遠くなるような密度で貼り重ねられています。また、大迫力の噴煙を描いた『桜島』(1954年)や、欧州外遊時に手掛けた『ロンドンのタワーブリッジ』(1965年)など、現地でスケッチブックを広げることなく、帰国後に脳内の記憶だけを頼りに一気に貼り上げた作品群は、観る者に人間の脳と芸術が持つ無限の可能性を突きつけます。