へそのゴマを嗅いだときに感じるツンとした刺激臭や、いわゆる「発酵したチーズのような臭い」は、単なる汗の臭いではありません。皮膚科医や微生物学の研究チームによる分析では、おへその窪みは人体の中でも特に細菌繁殖に適した「密閉型温室」であることが突き止められています。
おへその構造は深く入り組んだシワ状の窪みになっており、通気性が極めて悪く、湿度が保たれやすい環境です。ここに新陳代謝によって剥がれ落ちた古い角質(垢)、皮脂腺から分泌された皮脂、汗、そして衣服の繊維くずが混ざり合い、徐々に固形化していきます。これが「へそのゴマ」の正体です。そして、この蓄積物をエサとして爆発的に増殖するのが、皮膚に常在する細菌群です。
米ノースカロライナ州立大学の研究チームが実施した「Belly Button Biodiversity Project(へその生物多様性プロジェクト)」の大規模解析データによると、被験者のおへそからは累計2,368種もの細菌が同定され、個人平均でも約67種類のバクテリアが共生している実態が明らかになりました。特にブドウ球菌やコリネバクテリウム属、嫌気性菌が皮脂に含まれるトリグリセリドやタンパク質を分解する過程で、イソ吉草酸や酪酸といった揮発性低級脂肪酸を生成します。これこそが、チーズや納豆に似た強烈な異臭を放つ直接的な分子レベルのトリガーです。
へその臭い原因と真相は、衛生状態の怠慢だけが理由ではありません。おへその形状が深い人や、腹部に適度な皮下脂肪がある人ほど分泌物が奥底に滞留しやすく、常在菌による分解発酵が進行して強烈な臭いを放ちやすくなるという解剖学的な個体差も大きく関係しています。