喫茶ニューポピーの魅力の根幹にあるのは、単なる古民家リノベーションカフェという枠組みにとどまらない、半世紀近くに及ぶ血脈の物語です。ルーツは1977年創業、現在のJR名古屋駅太閤通口近くでオーナー・尾藤雅士氏の両親が営んでいた純喫茶「ポピー」に遡ります。サラリーマンの憩いの場として親しまれた同店は、建物の立ち退きや時代の変遷に伴い2010年に惜しまれつつ33年の歴史に一度ピリオドを打ちました。
幼少期から両親の背中と喫茶文化の温もりを見て育った尾藤氏は、他業種での経験や焙煎士としての研鑽を重ねた後、「両親が築いた喫茶ポピーのスピリットを現代の形で継承する」と決意します。選ばれた舞台が、城下町の面影を残す那古野・四間道の路地裏に佇んでいた築数十年の土蔵付き町家でした。2019年1月のリニューアルオープンに際し、かつての「ポピー」に「ニュー」を冠した背景には、昭和の純喫茶が持っていた大衆性と現代のサードウェーブコーヒー文化を架橋するという確固たる信念が込められています。
店内に一歩足を踏み入れると、土蔵特有の重厚な梁や木組みの骨格を活かした吹き抜け空間が広がります。1階の中央には燦然と輝く大型の自家焙煎機が鎮座し、深煎りの芳しいアロマが空間全体を包み込みます。先代から受け継がれたアンティーク調の調度品やレトロなランプシェードが配される一方で、抽出される一杯は世界各地の農園からダイレクトに届く自家焙煎スペシャルティコーヒー。過去へのノスタルジーに安住せず、現代の味覚へと再定義を成し遂げた点こそ、同店が老若男女を惹きつけてやまない決定的な理由です。