「いっどん」の芳醇にして透明感のある液体は、いかにして生まれるのか。その秘密は、現代の効率至上主義とは対極に位置するかめ壺仕込み 焼酎 特徴に集約されます。
杜氏の里笠沙で用いられているかめ壺は、床下に深く埋め込まれた信楽や備前の素焼き大壺です。磁器や金属タンクと異なり、素焼きの壁面には微細な気孔が無数に存在し、仕込みもろみが「呼吸」を続けます。加えて、かめ壺から放出される微弱な天然の遠赤外線効果ともろみ自体の緩やかな自然対流が、急激な温度変化を防ぎ、酵母にストレスを与えない低温発酵を長期間持続させます。この環境が、エグ味や雑味の元凶となる高級脂肪酸の過剰生成を抑え込むのです。
さらに特筆すべきは「麹(こうじ)造りの妙」です。ベースには芳醇なコクとキレを生み出す伝統の「黒麹」を用いながら、二次仕込みの段階で華やかな吟醸香を放つ清酒用の「黄麹」を添え麹として投入する独自の二段仕込みを採用しています。温度管理が極めてシビアな黄麹を南国の地で扱うには、熟達した杜氏の勘所が不可欠とされます。
仕上げの蒸留には、現在では日本国内でも数えるほどしか稼働していない「木桶蒸留器」を使用。金属製蒸留器とは異なり、天然の杉の木が蒸留時の過剰な蒸気圧をやわらげ、微量の木香と自然の丸みを原酒にもたらします。一滴一滴に人の手と自然の吐息が宿るからこそ、工業製品では絶対に到達できない唯一無二のテクスチャーが実現するのです。