「牡蠣や白子、あん肝が山盛りの痛風鍋を食べたら、翌朝激痛で歩けなくなるのではないか」という疑問に対し、医学的なメカニズムから結論を述べるならば、「健康な人が1食食べただけで、翌朝いきなり発作が起きる可能性は極めて低いが、すでに尿酸値が高い予備軍にとっては即座に引き金となり得る」というのが臨床現場の共通見解です。
日本痛風・尿酸核酸学会が策定した「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」によると、高尿酸血症の予防・治療におけるプリン体の摂取目安量は1日400mg以下と規定されています。これに対し、一般的な痛風鍋1人前に含まれるプリン体は、具材の組み合わせによって約1,200mg〜1,500mgに跳ね上がります。わずか1食で1日の許容量の3倍以上を一気に摂取する計算です。
体内に入ったプリン体は肝臓で分解され、最終代謝産物である「尿酸」へと変化します。通常、健康な成人であれば、急激に増えた尿酸も腎臓や腸管から徐々に排泄され、血中濃度は数日かけて正常値へと戻ります。しかし、健康診断などで血清尿酸値が7.0mg/dLを超えている「高尿酸血症」の状態にある人は話が別です。すでに関節内に尿酸塩の結晶が沈着しかけているため、痛風鍋によって血中尿酸値が急激に跳ね上がると、白血球がその結晶を異物とみなして攻撃を開始し、あの悶絶するような痛風発作(急性関節炎)を引き起こします。
さらに見落とされがちな落とし穴が、「水溶性プリン体の煮汁への流出」です。白子や牡蠣に含まれるプリン体は水に溶け出しやすいため、煮込みが進むほどスープのプリン体濃度は危険水準へと達します。具材を食べ終えた後の濃厚なスープで作るシメの雑炊やうどんは、まさにプリン体の濃縮エキスを最後の一滴まで飲み干す行為に他なりません。危険の正体は、具材そのもの以上に「スープの全飲み」に潜んでいます。