熱海神社巡りの中核を成すのが、洗練された空間演出で全国的な知名度を誇る「来宮神社」と、源平合戦の動乱を見つめ続けた古社「伊豆山神社」です。この二社は性格も歴史的文脈も全く対照的なコントラストを描いています。
【来宮神社】生命の根源に触れる「来宮神社大楠」と洗練された神域デザイン
熱海市西山町に鎮座する来宮神社は、熱海の総鎮守として名高い聖域です。参拝者の視線を奪うのは、国指定天然記念物である来宮神社大楠。樹齢は2100年以上、幹周り約24メートルという途方もない生命体は、本州屈指の巨樹として知られます。古くから「幹を一回りすると寿命が1年延びる」「誰にも言わずに願い事を心に秘めて一周すると願いが叶う」という伝承が語り継がれてきました。
しかし、来宮神社ご利益の真相を深掘りすると、単なる長寿祈願にとどまらない本質が見えてきます。境内には落ち葉で描かれたハート形のアートや、境内の杜を一望できるウッドデッキカフェ「茶寮 報鼓」が配置され、神道本来の「清々しさ(すがすがしさ)」を現代的なホスピタリティで見事に可視化しています。夕刻以降に実施される来宮神社ライトアップ混雑状況を現地調査したところ、点灯が始まる17時前後から日没後の19時にかけて参拝客が集中する傾向が見られます。約160個のLED照明が古木と竹林を照らし出す「木霊(こだま)プロジェクト」の幻想空間は、昼間とは一変した厳かな静けさを生み出しています。
【伊豆山神社】頼朝と政子の愛が宿る「伊豆山神社縁結び」と過酷な参道
一方、熱海駅の北東、海抜約170メートルの高台に位置する伊豆山神社は、来宮神社とは対極の武骨な歴史の重みを漂わせています。かつて「伊豆大権現」と称され、源頼朝が平家打倒の兵を挙げるにあたり加護を祈り、北条政子との逢瀬を重ねた舞台として名高い聖地です。この歴史的史実から、今日では伊豆山神社縁結びの強力な御利益を求める参拝者が全国から訪れます。
ここで見落としてはならないのが、伊豆山神社本殿階段と歴史の過酷さです。伊豆山浜(走り湯付近)の最下段から本殿までは全837段におよぶ石段が続いています。車道が通る中腹のバス停・駐車場からでも本殿までは170段以上の急勾配を登る必要があり、さらにその奥の「本宮社」を目指す場合は往復約2時間半の過酷な山道を踏破しなければなりません。手水舎に鎮座するシンボル「赤白二龍(せきびゃくにりゅう)」――赤は火(温泉)、白は水(海水)を表し、両者が交わり一体となって万物を生み出すという調和の哲学――を目にしたとき、参拝者はこの地が単なる恋愛成就祈願の枠を超えた「現実を動かす覚悟を試す場」であることを直感します。