1997年、社会現象となった小説『失楽園』の映像化において、映画版(黒木瞳・役所広司主演)とほぼ同時期に企画されたのが連続テレビドラマ版でした。すでに映画版のキャスティングが先行していた中、ドラマ版の主演ヒロイン・松原凛子役に誰を据えるかは、制作陣にとって最大の難題でした。
当時、川島なお美さんは『お笑いマンガ道場』などのバラエティ番組で絶大な人気を誇る一方、世間からは「華やかなバラドル」というパブリックイメージが根強く残っていました。そんな状況下で、彼女をヒロインに強く推薦したのが原作者の渡辺淳一さん本人でした。
渡辺氏は、川島さんが持つ青山学院大学出身の知性と、内側に秘めた激しい情熱、そして凛とした立ち居振る舞いに着目していました。「彼女なら、貞淑な人妻が禁断の愛に溺れていく狂気と美しさを完璧に表現できる」という作家の確信が、ドラマ版のキャスティングを一気に決定づけたのです。