「初犯だから逮捕されない」「交通刑務所に入ることはない」という俗説は、現代の司法実務においては完全に誤りです。初犯であっても身柄拘束(現行犯逮捕・通常逮捕)を受けたり、執行猶予がつかずに実刑判決が下されたりする事案には明確な共通項が存在します。
警察が逮捕に踏み切る3大基準
刑事訴訟法上、被疑者を逮捕するための要件は「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」に加え、「証拠隠滅の恐れ」または「逃亡の恐れ」が認められる場合です。過失運転致傷の現場において、以下のような事情があると即座に逮捕勾留の対象となります。
- 救護義務違反(ひき逃げ)・事故不申告:事故後に負傷者を放置して現場を離脱した場合、過失運転致傷罪に加えて道路交通法違反(救護義務違反)が重なり、ほぼ100%逮捕されます。
- 虚偽供述や証拠の隠匿:事故直後に「相手が勝手に突っ込んできた」と嘘の証言を繰り返したり、ドライブレコーダーのSDカードを抜くなど証拠隠蔽を図った場合。
- 定まった住居や定職がない場合:身元引受人がおらず、出頭要請に応じない懸念があるときは、軽微な事故でも身柄が拘束されます。
執行猶予がつかず「懲役実刑」となる決定的な境界線
初犯の過失運転致傷罪で検察官が公判請求し、裁判所が実刑判決を下すケースの多くは、単なる「うっかりミス」の域を超えた過失の態様と被害結果の重大性が重なった場合です。
近年の判例の動向を見ると、とりわけ「スマートフォンを操作・注視しながらの運転(いわゆる『ながらスマホ運転』)」に対する司法判断は厳罰化の一途をたどっています。前方を全く見ていない状態で横断歩道上の歩行者を跳ね飛ばし、被害者に遷延性意識障害(植物状態)や重度後遺障害を負わせた事案では、初犯であっても情状酌量の余地が極めて乏しいと判断され、禁錮2年〜3年の実刑判決が確定する事例が相次いでいます。
その他、赤信号の完全看過、制限速度を30km/h以上超過しての走行、被害者遺族に対する誠意のない態度や示談の決裂が重なった場合、初犯であっても刑務所への収監を免れることはできません。