日本に生息するオコジョ(本州のホンドオコジョ、北海道のエゾオコジョ)は、季節の移り変わりとともに劇的な換毛を行います。初夏から秋にかけての夏毛は、背面から頭部にかけてが落ち着いた茶褐色、腹部から喉元にかけてが純白というツートンカラー。一方、初雪を迎える晩秋には全身が真っ白な雪景色と同化する完全な冬毛へと生え変わります。
なぜ全身を白く染め上げながら、尾の先端だけ黒い毛を残すのか。進化生物学および動物行動学の観察研究において、有力視されているのが「天敵に対するデコイ(視線誘導)効果」です。
オコジョの天敵となるイヌワシやクマタカ、オオタカといった猛禽類は、卓越した視力で獲物を捕捉します。白銀の雪原において、動く黒い点は猛禽類の視線を強烈に引きつけます。捕食者が急降下して攻撃を加える際、狙いが急所である頭部や胴体ではなく「尾の先端の黒点」に逸れることで、オコジョは致命傷を免れ、岩の隙間へと逃げ込むわずかな刹那を稼ぎ出すのです。