遊真が抱える最も残酷な真実が、空閑遊真寿命のリミットです。黒トリガーの中に保管されている遊真の生身の身体は、完全に時間が止まっているわけではありません。損傷が激しすぎるため、トリガーの生命維持機能を用いても緩やかな壊死の進行を完全に防ぐことはできず、数年単位で着実に生命活動の終焉が近づいています。
「寝る必要がない」「睡眠の代わりにトリオン体のメンテナンスが行われる」という体質は一見便利に見えますが、実態は生体維持のための応急処置に過ぎません。トリオン体にいかにダメージがなかろうと、封印された本体の細胞組織が限界を迎えれば、トリオン供給も断たれて完全に死亡します。遊真が当初「父を生き返らせる手がかり」を求めて日本のボーダーを訪れたのも、自らの命に未練はなくとも父の遺志の意味を求めた結果でした。
一方、物語で読者の関心を集めるのが、なぜ遊真がB級ランク戦で黒トリガーを用いないのかという点です。このランク戦使えない理由には、組織の論理と遊真の目的の双方が絡んでいます。
ボーダー本部にとって、黒トリガーは一国の軍事バランスを左右する最重要機密兵器です。隊員同士の模擬戦であるB級ランク戦に投入すれば、対等な戦術評価が不可能になるだけでなく、隊員のトリオン体を不要に過剰損壊させる危険があります。また、遊真自身も「三雲修を勝たせ、玉狛第2として自力で遠征部隊の切符を掴む」ことを誓っており、規格外の親の遺産に頼るのではなく、通常配備のトリガー(スコーピオンやグラスホッパー)を用いた戦技で勝利することに強いこだわりを持っています。