千紅万紫(および千紫万紅)のルーツをたどると、南宋の著名な儒学者・思想家である朱熹(朱子)が詠んだ漢詩『春日(しゅんじつ)』にたどり着きます。
『春日』の結びには、次のような名句が記されています。
「等閑に東風の面(おもて)を識得す、万紫千紅は総(すべ)てこれ春」(ふと東風が運ぶ春の気配を感じ取れば、咲き誇る万紫千紅のすべてが春の姿そのものであった)
朱熹はこの詩の中で、川辺を散策しながら冬の寒さが去り、一斉に自然が色彩を取り戻した瞬間の感動を鮮烈に描写しました。この「万紫千紅」の語が後世の文人たちによって愛好され、詩文や詞の中で「千紫万紅」「千紅万紫」と形を変えながら定着していったとされています。厳しい季節を越えた先にある生命の爆発的な開花という文脈を知ると、この四字熟語が持つ情景の鮮やかさが一段と際立ちます。