本作は一見するとファンタジックなラブストーリーですが、物語構造を深く読み解くと「愛する者への依存からの脱却」と「グリーフケア(哀嘆の処理)」という極めて現代的なテーマが浮き彫りになります。
生前の港は、不器用なひな子を支える「完璧な救助者」でした。しかし、心理学的な観点から見れば、ひな子は自分の人生の舵取りを港に委ねきっており、二人の関係性にはある種の「共依存的な傾斜」が存在していました。港が水になって現れ続ける現象は、ひな子が現実の悲哀から逃避し、自立を先送りするための防衛機制としても機能していたのです。
港自身もまた、「自分が水の中に留まり続けることは、ひな子を縛り付けてしまう」という矛盾に気づいていきます。結末において、港が成仏し天へと還っていくシーンは、単なる悲恋の幕切れではありません。ひな子が心理的バウンダリー(自他の境界線)を確立し、「港がいなくても、自分の足で人生の荒波に乗っていく」という決意を固めた瞬間なのです。
【プロの結論】本作を観るべき人・好みが分かれる人の明確な判断基準
湯浅政明監督のフィルモグラフィ(『夜は短し歩けよ乙女』『映像研には手を出すな!』『犬王』など)の中でも、本作は際立ってストレートな感情描写が特徴です。鑑賞にあたっての向き・不向きの基準は以下の通りです。
【強くおすすめできる人】
・大切な人との別れを経験し、前を向くためのきっかけや温かい涙を求めている人
・湯浅政明監督特有の、ダイナミックで躍動感あふれる水の作画・カメラワークを堪能したい人
・王道の純愛アニメーションとキャッチーなJ-POPの融合を楽しみたい人
【やや好みが分かれる人】
・難解な伏線回収や、徹底したハードボイルド設定をアニメ映画に求める人
・序盤の甘美なカップル描写や歌のシーンに照れを感じてしまう人