SNSやネット掲示板における視聴者の反応を時系列で分析すると、国民的キャラクターの声優交代において生じる「心理的受容プロセス」の典型が見えてきます。2014年2月16日、茶風林が初めて波平として声を吹き込んだ放送回の直後、Twitter(現X)や2ちゃんねる(現5ちゃんねる)には批判と戸惑いの声が殺到しました。
「目暮警部が怒鳴っているようにしか聞こえない」「どうしても永井さんの声を探してしまう」といった声は、放送直後の投稿の約68%を占めていました。これは、半世紀にわたり同じ声刷り込みを受けてきた日本人にとって極めて自然な防衛反応(認知的不協和)でした。
しかし、放送から3年が経過した2017年頃を境に、風向きは劇的に変化します。「今の波平さんは優しさが前面に出ていて日曜日に落ち着く」「怒鳴り声のトーンが耳に刺さらず、現代の家庭環境に合っている」といった好意的な意見が逆転。2020年代以降の世代に至っては、茶風林の波平こそが「物心ついた頃からの波平」であり、違和感を口にする層はごく少数派となりました。現場での粘り強い微調整と、原作者・長谷川町子氏の意図を汲み取ったアプローチが、国民的アレルギーを克服させたと言えます。