京都のカルチャーを語る上で欠かせない存在である恵文社一乗寺店。1975年の創業以来、独自の進化を遂げてきた同店が世界的な評価を受ける最大の理由は、「探している本を買いに行く場所」ではなく「思いがけない本と出会う場所」としての空間設計にあります。
多くの大型チェーン店では、出版社の新刊配本システムや売上ランキングに基づいた棚構成が一般的です。しかし、恵文社一乗寺店ではジャンルごとの厳密な分類にとらわれず、料理本の隣に食をテーマにしたエッセイや旅の紀行文、器の写真集が並ぶといった「文脈(コンテクスト)を編む棚づくり」が徹底されています。書棚の間を歩く読者の思考が自然と広がるこのセレクト手法こそが、国内外のクリエイターや読書家を惹きつけて離さない決定的な要因です。