現在、東京のウォーターフロントや特定のオフィス特区を中心に、自動運転タクシー実証実験プロジェクトが加速度的に展開されている。セーフティドライバーが運転席に座る段階から、遠隔監視のみによる無人走行へ。その過渡期において立ち上げられた「TOKYO TAXI PROJECT」には、同社からも選りすぐりのベテラン乗務員がテスト走行員として派遣されている。
長年培われた「人間の眼」による危険予知能力を、AIの教師データとしてどう移植するか。白線の消えかかった交差点、急な割り込みを見せる配達バイク、雨天時の乱反射など、シミュレーターでは再現しきれない路上カオスの解読作業が続く。自動化によってドライバーの職が奪われるという単純な対立構図ではなく、テクノロジーを手なずけ、自らの経験をシステムの知性に昇華させるプロセスがここにある。老舗の現場が培った暗黙知は今、最先端の自律走行アルゴリズムを育てる貴重な肥料となっている。