移転案が公表されるやいなや、地元住民や文化人、研究者コミュニティの間には激しい動揺が広がりました。日本図書館協会をはじめとする専門家組織や市民有志が結成した団体が相次いで異議を唱え、署名活動や公開質問状の提出を行うなど、異例の大規模な移転反対運動の経緯をたどることになります。
反対派が最も強く警鐘を鳴らしたのは、蔵書廃棄・縮小の懸念でした。商業施設のフロアは、もともと一般的な物販店を想定して設計されています。1平方メートルあたり数百キロから1トンを超える重量がかかる図書・書庫を支えるだけの「床耐荷重」が不足しているのではないかという技術的疑念が噴出しました。重量制限を満たすために貴重な郷土資料や専門書が除籍(廃棄)されるのではないか、あるいは開架スペースが著しく圧縮されるのではないかという懸念が、利用者の不信感を急速に煽ったのです。
また、中央公園の豊かな緑に囲まれ、広島市映像文化ライブラリーやこども図書館、広島市現代美術館などと近接する「文化ゾーン」としての連続性を分断し、商業ビル内に押し込めることへの情緒的・環境的反対も根強く存在しました。
この対立は広島市議会の議論と真相を巡る攻防へと発展します。市議会総務委員会などでは、移転関連予算を巡って連日のように激しい質疑が交わされ、市民団体からの陳情が採択されるなど、一時は計画の白紙撤回さえ囁かれる事態となりました。市側はこれを受け、建物の構造調査を重ねて耐荷重補強工事の実現性を証明したほか、高密度な電動集密書庫や地下・郊外サテライト書庫の組み合わせによって「蔵書約100万冊の収容力を維持する」と明言。さらに、こども図書館を中央公園内に存続・再編させる妥協策を講じることで、2022年度末にかけて移転関連予算の議決に漕ぎ着けたのです。