強烈なビジュアルを持つ帝に命を吹き込んだのが、歌舞伎俳優の中村七之助です。高畑監督作品の特徴である「プレスコ(作画の前に声を先行して収録する手法)」において、中村七之助は高貴な生まれが自然と醸し出す上品さと、同時に透けて見える自分本位な軽さを完璧なバランスで演じ分けました。
声だけを聴けば間違いなく気品あふれる美男子でありながら、画面に現れるビジュアルは衝撃的なあごを持つ男――この「耳から入る美声」と「目から入る尖った造形」の絶妙なギャップこそが、帝というキャラクターの存在感を唯一無二のものに引き上げました。中村七之助の名演がなければ、単なる色物キャラクターで終わっていた可能性すらあります。