本番組を語るうえで外せないのが、スタジオ司会を務めた徳光和夫の存在感だ。滞在先のVTRを見つめる彼の目からあふれ出る涙は、番組の名物であると同時に、お茶の間の感情を代弁する重要な役割を果たしていた。
毎日放送(MBS)とTBSテレビがタッグを組んで世に送り出した『世界ウルルン滞在記』は、それまでのテレビ放送業界に存在した典型的な紀行番組の概念を根本から覆した。単に珍しい文化を紹介するのではなく、異文化の中に放り込まれた一人の人間が葛藤し、打ち解け、別れに涙するプロセスを克明に追うドキュメンタリーバラエティのスタイルを確立したのだ。スタジオの徳光和夫が涙を流すたび、視聴者もまたモニターの向こうの「名もなき異国の家族」と感情を同期させていたのである。