格式高いレストランの現場で、利用者が「よかれと思って行った行動」が実は重大なマナー違反になっているケースが後を絶ちません。代表的な例が、乾杯時のグラスの接触です。居酒屋の感覚でカチリと音を立ててグラスを合わせると、繊細なバカラやリーデルなどの高級クリスタルガラスを破損・傷つける恐れがあります。フランス料理の乾杯では、グラスを胸の高さまで掲げ、同席者とアイコンタクトを交わして微笑むのが正解です。
また、料理の合間に手をつけるパンの食べ方にも落とし穴があります。パンを皿の上で丸ごとかじりついたり、スープに浸して食べる行為は基本的にタブーとされています。パンは必ず一口大に指でちぎり、バターを塗ってから口へ運びます。パンくずがテーブルに散らばっても、自分で手を使って払う必要はありません。デザートの前にギャルソン(サービススタッフ)が専用の器具(ダストパンやダストブラシ)で綺麗に掃除してくれるため、そのままにしておくのが洗練された大人の振る舞いです。
さらに、スープを飲む際に音を立ててすする行為や、スープ皿を手で持ち上げて最後の一滴まで飲み干す行為は厳禁です。フランス式では、スープスプーンを手前から奥へ滑らせてすくい、スプーンの横から音を立てずに口へ流し込みます。残りが少なくなった場合は、皿の手前側を少し持ち上げて奥へスープを集めるのが正式な作法です(イギリス式は奥を持ち上げて手前に集めます)。