平日の午前8時半、都内主要ターミナル駅の改札前やスクランブル交差点に立つと、イヤホンを装着した歩行者が引き起こす危うい光景が幾度となく繰り返される。後ろから急接近する救急車のサイレンに気づかず道を塞ぎ続ける人、背後からベルを鳴らす自転車に驚いて思わぬ方向へステップを踏む人。その多くが、外音取り込み機能を切った状態で周囲の音を完全に遮断している。
インターネット上のコミュニティや知恵袋、SNSの投稿を分析すると、歩きイヤホンに対する世間の視線は冷ややかさを増している。寄せられる声の多くは、単なる「行儀の悪さ」への不満ではなく、実被害や衝突の恐怖に根ざしている。
「背後から歩行速度の速い人が迫ってきても足音すら聞こえないらしく、突然斜めに進路変更してぶつかってくる。こちらが避けるのが当たり前だと思っているのか」(30代会社員・SNS投稿)
「狭い歩道でクラクションを軽く鳴らしても一切反応しない。窓を開けて声をかけても聞こえず、立ち往生させられた」(40代配送ドライバー・知恵袋質問への回答)
街頭での警察官による職務質問や声かけも、法的な検挙ではなく「現場の指導・注意」として日常的に行われている。特に繁華街や見通しの悪い交差点において、警察官がイヤホンを装着した歩行者に対して「周囲の音が聞こえなくなって危険ですから外してください」と注意を促す場面は頻繁に見られる。法的な強制力はないものの、重大事故を未然に防ぐための行政指導の一環として現場では徹底されている。