かつては多くの家族連れや観光客で賑わった江川海岸が、なぜ潮干狩りの営業休止という苦渋の決断に至ったのか。漁業関係者への取材や環境データから見えてくるのは、複合的な3つの要因です。
1. 東京湾内におけるアサリ天然資源の著しい減少
第一の理由は、東京湾全体の貝類資源の減少です。近年の海水温上昇や青潮の発生、クロダイやエイなどによる食害被害が深刻化しており、天然アサリの自律的な増殖が極めて困難な状況に陥りました。潮干狩り場を維持するには大量の稚貝・成貝を外部から仕入れて撒く(放流する)必要がありますが、仕入れ価格の高騰と資源歩留まりの悪化が採算ラインを大きく圧迫しています。
2. 砂浜・干潟の流出と底質環境の悪化
相次ぐ大型台風の高潮被害や海流の変化により、干潟の泥質化や砂の流出が進行しました。貝類が生息しやすい砂泥域が狭まったことで、安全に歩行できる干潟エリアが縮小し、観光客を安全に受け入れるキャパシティの維持が難しくなりました。
3. 運営コストの増大と安全管理上のリスク
感染症対策や老朽化した施設改修、さらに監視員や誘導スタッフの人件費高騰が重なり、単独漁協での観光潮干狩り運営が困難になりました。無理に開場して事故やトラブルを招くリスクを回避するため、休止を継続する判断が下されています。