こうした急速な世界的人気の高まりに対し、イタリアの伝統を守る機関も熱視線を送っている。食文化の保全を使命とする「アカデミア・イタリアーナ・デッラ・クチーナ」は、無秩序なアレンジによってタヤリンのアイデンティティが損なわれないよう、正式な配合や製法のアーカイブ化を進めてきた。
一方で、同じくピエモンテ州ブラで産声を上げた「スローフード協会」のアプローチは、生物多様性と小規模生産者の保護に直結している。タヤリンに不可欠な上質な卵を生み出す地鶏の飼育環境や、昔ながらの製粉方法を守る水車小屋の支援など、麺の一本に繋がる生態系そのものを守ろうとしている。
ただ美味しいパスタを食べるだけでなく、その背後にある風景や農家の生活までを味わうこと。彼らが発信し続けるメッセージは、安易なグローバリズムに疲弊した消費者の価値観を静かに、しかし確実に変えつつある。