牛は植物の硬い細胞壁(セルロース)を効率よくエネルギーへ変換するために進化した反芻動物である。一度飲み込んだ牧草を口に戻して噛み直し、再び飲み込むというプロセスを成立させるため、それぞれ全く異なる役割と構造を持つ4つの区画が形成された。
第一胃から第四胃までの個性と栄養的な特徴を順に見てみよう。
■ ミノ(第一胃 / ルーメン)
全胃袋の約8割を占める最大の器官。膨大な微生物が棲息し、植物繊維を発酵・分解する発酵タンクの役割を果たす。食肉としては肉厚で弾力に富み、包丁で格子状の切り込みを入れて提供されることが多い。極めて高タンパクかつ低脂質、ビタミンB群や亜鉛をバランスよく含み、軽快なコリコリ食感が楽しめる。
■ ハチノス(第二胃 / レティキュラム)
内壁が六角形の蜂の巣のような立体網目状になっている部位。第一胃から送られてきた内容物を細かく選別し、口へと押し戻すポンプの役割を担う。コラーゲン質を豊富に含み、独特のもっちりとした弾力が持ち味。イタリア料理の「トリッパのトマト煮込み」をはじめ、煮込み料理で真価を発揮する。
■ センマイ(第三胃 / オマサム)
無数のヒダが幾重にも重なり合い、「千枚」の葉のように見える器官。内容物の水分やミネラルを絞り取るフィルター機能を担っている。脂肪分が極めて少なく、鉄分が豊富に含まれているのが最大の特徴だ。湯引きして特製タレで味わう「センマイ刺し」は、シャキシャキとした軽快な歯ごたえがクセになる。
■ ギアラ(第四胃 / アボマサム)
前述の3つが食道の発達した器官であるのに対し、胃酸や消化酵素を分泌する「本来の胃」にあたるのがこの部位だ。赤みがかった肉質に適度な脂が乗り、噛むほどにジューシーな旨味が溢れ出す。濃厚なコクと強い弾力を併せ持ち、脂の甘みをダイレクトに楽しみたい層から絶大な支持を得ている。