富士山を取り巻く静岡県と山梨県は、それぞれ異なる魅力とアプローチを持っています。登山ルートの構成や景観の面でも、はっきりとした個性の違いが見られます。
現在、富士山には主に4つの登山ルートが存在します。
- 吉田ルート(山梨県側):登山者全体の約6割が利用する最も人気のルート。山小屋や救護所が多く、首都圏からのアクセスも良好。登山道から美しいご来光を拝むことができます。
- 富士宮ルート(静岡県側):スタート地点の標高が約2,400メートルと最も高く、山頂までの距離が最短のルート。本宮浅間大社への信仰登山としての歴史を色濃く残します。
- 須走ルート(静岡県側):豊かな樹林帯から始まり、下山時には名物の「砂走り」を豪快に駆け下りることができる自然派ルート。
- 御殿場ルート(静岡県側):標高差が約2,300メートルあり、距離が最も長く健脚向けのルート。混雑が少なく、雄大な大自然を静かに堪能できます。
また、景観の観点からも両県には古くからの自負があります。静岡県側から望む富士山は、駿河湾越しに見上げるダイナミックな姿や宝永火口の窪みが特徴で、古くは「表富士」と呼ばれました。対して山梨県側からの富士山は、富士五湖の湖畔に映る「逆さ富士」に代表される左右対称の美しい円錐形が際立ちます。かつてはどちらが正面かを巡る論争もありましたが、現在では「どの角度から見ても唯一無二の絶景」として、それぞれの表情が高く評価されています。