東宝の独走を許すまいと、他社もまた桁外れの熱量で傑作を世に送り出していた。とりわけ大映株式会社は、国際映画祭での評価を背景に圧倒的な映像美を誇る作品を連発。海外マーケットに日本映画の美意識を刻みつけ、映画界全体の底上げに大きく寄与した。
さらに木下惠介監督の『二十四の瞳』が公開され、日本中を涙の渦に巻き込んだのもこの時期である。戦争に翻弄される名もなき教師と子どもたちの姿を描いたヒューマニズムの最高峰は、巨大怪獣や豪壮な武士たちの活劇と互角以上に渡り合い、当時の映画興行界を豊穣なものにした。大衆の娯楽が映画一強であった時代、日本映画界の各社がプライドを賭けて激突した興行戦争が、奇跡的なクオリティの底上げをもたらしたのである。