食品パッケージの「無塩」という文字だけを見て「減塩・食塩無添加」と誤認するケースが後を絶ちません。精肉業界における「塩せき(えんせき)」とは、原料肉を食塩、香辛料、調味液、そして亜硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどの発色剤と共に漬け込む工程を意味します。
つまり、無塩せきとは「発色剤を使わずに塩づけ処理を行ったもの」であり、味付けや肉の結着を目的とした食塩そのものは通常通り添加されています。消費者庁の食品表示基準でも明確に区分されており、無塩せきハムだからといって塩分摂取量を抑えられるわけではありません。
通常の加工肉において、発色剤である亜硝酸ナトリウムは3つの重要な役割を担っています。
第1に、肉に含まれるミオグロビンと結合して鮮やかなピンク色を保つ「発色作用」。第2に、加工肉特有の熟成香を醸成する「風味形成作用」。そして第3が、食中毒原因菌の中でも極めて強い毒素を産生するボツリヌス菌の増殖を抑える「静菌作用」です。無塩せきハム・ベーコンは、これらの役割を発色剤に頼らず、肉本来の性質と冷蔵技術によってカバーする製品設計となっています。