ヘルスケア情報において、最も危険なバイアスが「痛くないから大したことはないだろう」という正常性バイアスです。人間は強い痛みがあれば自発的に病院へ行きますが、無症状であるほど「疲れのせい」「加齢によるイボ」と都合よく解釈しがちです。
しかし、腫瘍内科医の臨床データが示す通り、悪性腫瘍による頸部リンパ節腫脹の8割以上は初期において無痛です。痛みを伴うのは、腫瘍が急激に増大して周囲の知覚神経を圧迫したり、内部が壊死・出血を起こしたりした段階であり、その時点ではすでに病期が進行している可能性が高くなります。
また、「しこりを揉みほぐせば消える」という民間の俗説を信じ、強くマッサージをしてしまうケースも見られます。これは医学的に極めて危険な行為です。細菌感染であれば炎症を周囲へ波及させて重症蜂窩織炎を引き起こす恐れがあり、仮に悪性腫瘍であった場合は、がん細胞を周囲の脈管へ押し広げ、遠隔転移を誘発するリスクすら孕んでいます。「しこりは不用意に触らず、静かに専門医の診察を受ける」が鉄則です。