大相撲において最高位である横綱への昇進、いわゆる綱取りの条件は、日本相撲協会の寄附行為および諮問機関である「横綱審議委員会(通称・横審)」が定める内規によって厳密に定義されています。力士の実力を示す「力量」と、伝統文化の体現者としての「品格」の双方が極めて高い次元で満たされて初めて、白麻の綱を締める栄誉が与えられます。
日本相撲協会公式発表および横綱審議委員会の内規に明記されている大原則は、以下の2点に集約されます。
- 大関の地位で2場所連続優勝すること
- または、それに準ずる良好な成績を収めること
昇進の手続きは極めて格式高く進行します。まず、本場所の千秋楽前後で好成績を挙げた大関に対し、日本相撲協会の理事長が横綱審議委員会へ「横綱推薦の可否」を正式に諮問します。これを受けて有識者で構成される横審(定員15名以内)が臨時会合を開き、出席委員の3分の2以上の賛成を得て推薦が決議されます。その後、相撲協会の臨時理事会において満場一致で承認されることで、使者が大関のもとへ派遣され、正式な昇進伝達式が執り行われる流れです。
ここで極めて重要なのが、大関昇進と横綱昇進の決定的な違いです。大関への昇進は「三役(関脇・小結)で直前3場所合計33勝」が目安とされ、昇進後も2場所連続で負け越せば関脇へ陥落する「カド番制度」が存在します。一方、横綱にはいかなる理由があっても陥落が存在しません。成績が振るわなくなれば「現役引退」の一択しか残されていないため、審議委員会は一過性の勢いではなく、将来にわたって最高位の権威を背負い続けられる絶対的な安定感を求めるのです。