SNSや口コミなどで毎年のように見られるのが、「高いお金を払って予防接種を受けたのに、普通にインフルエンザに罹ってしまった」という声です。このギャップが生じる背景には、ワクチンの医学的な役割とウイルスの特性に関する決定的な理由が存在します。
まず理解しておくべきは、インフルエンザワクチンの主たる目的が「発症の予防」および「重症化・死亡の阻止」にあるという事実です。ウイルスが鼻や喉の粘膜に付着する「感染」そのものを100%遮断することは困難ですが、体内に侵入したウイルスの急激な増殖を抑え、高熱や肺炎、脳症といった深刻な合併症を防ぐ確率を大幅に引き上げます。実際、臨床現場のデータでも、接種歴がある患者は未接種者に比べて有熱期間が短く、軽症で回復する傾向が顕著に報告されています。
また、ウイルスの「型の一致度」も関係しています。季節性ワクチンは、WHOや国立感染症研究所の予測に基づき、毎年流行が予測されるA型2系統・B型2系統の計4株をブレンドした「4価ワクチン」が製造されています。しかし、ウイルスの抗原が微小に変異(抗原ドリフト)した場合や、予測と異なる亜型が局地的に流行した場合には、期待される予防効果の数値が変動することがあります。